手は不思議なクスリです
私の学校の先生は第一時間目の時に「皆さん!ハリと手技とどちらが高級か分かりますか?」と問いかけられました。
「この手が高級なんですよ!」「ハリではなく手です!」と言われたことが忘れられません。
手は霊長類の中でも人間が手に入れた触覚という触れ合いの治療ツールの結晶であると思います。
肌に直接マッサージの刺激を与えることは人のイノチの流れ[温かみなど]を伝えることと圧刺激による摩擦によって,さらに皮下の直下にあるリンパや血流を促すことにもなります。
その刺激は皮膚のセンサーとなる受容器である神経末端部で生理的反射副次的に起こすことにもなります。
特に神経-内分泌-免疫系のシステムはマッサージ刺激によって反射的に情報が伝わり活動を開始し体調を整えます。

代替医療としての手技

世界には伝統医学・民間療法が多く伝わっています。
代替医療で伝わる鍼灸、指圧、気功、エネルギー療法や精神・心理療法、その中でも手技・整体療法(Manipulative and Body-Based Methods)中心とした療法を取り上げます。

日本でマッサージを行うのには国家資格がいる

学校に入学して知ったことの1つがマッサージも指圧も按摩も資格は、あん摩マッサージ指圧師という一つの資格ということでした。
マッサージも指圧も按摩も違うものです。
資格は、1つの資格ですが3つの手技を3年かけて習得します。
3つの手技には、日本で成立した歴史があります。
日本には江戸時代より以前より連綿と続いた按摩という療法があります。
明治時代に入りフランスから輸入されたのがマッサージというです。
戦後の昭和30年代に更に指圧という手技が法的に認められました。
指圧は戦後の新しい手技療法です。
一つの資格に3つの手技が入っています。
これは戦後一つの資格になったのですが、いろいろな思いがあるようです。
あん摩マッサージ指圧は養成学校で学び試験を受けて免許をもらいます。
養成学校も盲学校と専門学校に分かれています。
大学はまだありません。
修養年数は共に3年です。
ちなみに私の時代(平成元年)は都道府県の試験で資格を取りました。
当時の修養年月は2年でした。3年生で資格を取りさっさと開業した同級生もいました。
現在では修養年数が3年となり、厚生労働大臣の免許となっています。
この3年間であん摩マッサージ指圧の基本と解剖生理学や病理学、保健衛生などを学びます。
すべてを学校で学ぶことはもちろん難しいので弟子入りしたりセミナーに参加したりして自分のスキルや知識を磨いていきます。
学校で学ぶことは基本中の基本です。
卒業してからすぐに開業や臨床で使えるかといえば、全く努力次第です。
鍼灸よりは習得はし易いと思います。
私の頃は2年で取れたのですがすぐに開業していた強者の同級生はいます。いいお小遣い稼ぎになっていました。

マッサージは最古の自然療法

マッサージは、人類が生み出した最も古くから行なわれている自然療法といえます。
人類が生まれてから本能的に手を触れて和らげていた行為、さする、押す、揉む、叩くなどがより効果的な方法に発展整理してきたものがマッサージなどの手技です。
マッサージ(Massage)という言葉はアラビア語の「押す」(mass)ギリシャ語の「こねる」(sso)という言葉とラテン語の「手」(Manus)ヘブライ語の「触る」などと同一語源であるといわれています。
すなわちマッサージは「さすり」「押したり」「捏ねたり」する療法です。
紀元前四~五世紀のころ、ギリシアの医聖ヒポクラテスは『凡そ医たる者は、医学に関する学科とともにマッサージの一科をも研究せねばならない』とマッサージの効力と必要を述べたといわれています。
残念ながらその後長い間マッサージの研究は絶えたようです。

再び注目を浴びたマッサージ

マッサージが再び注目されたのが16世紀です。
16 世紀後半になり、フランスの医師アムグロアスバレーがマッサージを研究しその効用について論じた。
18世紀から19世紀の初頭にスウェーデンのバー・ヘンリック・リング が治療体操に没頭し大いに、この方面に普及に貢献しました。
これがスウェーデンマッサージとしてしられました。
スウェーデンマッサージは現在、で最も広く使用されているマッサージです。
フェンシング教師、体操インストラクターでもあったヘンリック・リングでありましたが彼は、マッサージと運動療法を併せ持っている治療のシステムを開発しました。
1813年には、リングは、この方法を利用可能にするため に研究所を設立し、リングのプロラムは、「医療の体操」および「スウェーデンの運動治療」と呼ばれたものを含んでいました。
その後、これらはスウェーデン式マッサージとして知られるようになりました。
1850年代にスウェーデンで勉強したニューヨーク出身の内科医で兄弟のジョージ・テーラー、チャールズ・テーラーが、マッサージ療法を米国に紹介しました。
この技術は徐々に信頼されるようになり、 1900年代の初めには医師によって広く使用されました。
解剖と生理学の従来の西洋の概念に基づいた方法を含んでいます。

5つの操法が使用されます。

* 軽擦法 ;(長い滑走ストローク)
* petrissage ;(練り圧縮ストローク)
* 叩打法;(衝撃を軽く打つ)そして
* 振動 (細やかな震動)。
以来マッサージはドイツ、フランス、オランダ等の諸国に普及するに至りました。
この時期マッサージの効果を医療技術として紹介したのはオランダのメツツゲルと門人のベルグマンです。
彼らは手技を選定し理論を構築しました。
1875 年 ドイツの医師モーゼンガイル氏はマッサージの循環器系に及ぼす影響の実験的証明を外科学会に発表しその後、整形外科医学の発達に伴い次第に応用されるようになりました。
19世紀にはストックホルムの大学では医療の一分科をなすようになります。
その後ヨーロッパ諸国におけるマッサージ研究は盛んになり、学理の研究とともに術式の改善もすすみ、臨床応用の新しい分野を整形外科、内科、外科に拡がり、近代医療マッサージの体系を確立しました。
マッサージ術が日本にもたらされるのは明治18年陸軍の国総監・橋本綱常が欧州視察で見聞した医療マッサージの関係書籍を集めて持ち帰り、それを部下の軍医 長瀬時衡が外科での非観血的療法として位置づけたことに始まります。
正統的なマッサージをクイックマッサージとかで比べてほしくないのでありますが、残念ながら日本の規制もゆるく無資格マッサージが広まってしまいました。
参考文献 『あん摩マッサージ教程』柳谷素霊著  『手あて健康療法』三浦一郎著